今月の花(4月)アスパラガス
「アスパラガスのお浸しを作っておきました。どうぞ!」といわれ、出されたのは薬指くらいの太さのきれいな緑のアスパラガス。家の近くでつんできたということでした。
イタリアの初夏のオルヴィエート、世界遺産で有名なこの町でよく冷えた緑のアスパラガスにふわりと削り節をかけていただくとは予想外でした。
長くイタリアに住み、オルヴィエートでワインとオリーブオイルを作り、日本にも輸出をしているTさんとは実は初対面。日本で姉上からぜひイタリアに行ったら弟を訪ねてください、という言葉に甘え、フィレンツェから1時間ちょっとのこの街にローマ行きの列車に乗ってやってきたのでした。
野生ならではの深い香りがひろがるアスパラガスの若芽はお湯にちょっと通したくらいでも柔らかく、どこかほろ苦く、これが本来のこの野菜の味なのだと思いました。イタリア料理も大好きな私ですが「なんだかほっとしました」というと、Tさんはこの時期、日本からの客人にはこうしてアスパラをふるまうということでした。
アスパラガスは緑のものと白いものとがありますが、実は同じもので白は光を遮断して作られたもの。そのため時には横穴や洞窟などを利用して栽培されることもあります。しっかりした株になるまで2年は待ち、3年目の春に出た新芽を収穫し始めるといわれます。その後10年は収穫可能なのだそうです。
その時私はフィレンツェ郊外の古い修道院を改装したペンションに泊まっていたのですが、庭にふわふわとした緑を付けた1.5メートルくらいの草のようなものがあり、棒を四隅に立ててひもで囲ってあり、名前を聞くとアスパラガスでした。葉のように見えるのはもともとは細かく分岐した茎です。
この旅の初めにまずミュンヘンで最盛期の白アスパラをごちそうになったのですが、食用のアスパラガスはヨーロッパ原産。花材に使用するのは南アフリカ原産と聞きました。
アスパラガスとはアスパラガス属をさす名前で、いけばなの花材にも多く使われます。アスパラガスプルモーサス、天門冬、スプレンゲリ、スマイラックス、ミリオン、アプライト、アスパラガスルツィイなど、アスパラガスの種類は豊富です。
「冷蔵庫で保管するには先を立ててください」という説明書がついたアスパラガスが北海道から送られてくる季節ももうすぐです。(光加)